イナゴ(写真提供:佐伯真二郎氏)

 欧米諸国や韓国では、国や企業レベルで新しい昆虫食市場を開拓する動きが出始めている。また、日本においてもマスメディアで昆虫食が紹介される機会が増えてきている。

 その背景には、2013年に国連食糧農業機関(FAO)から発表された報告書「Edible insects - Future prospects for food and feed security(食用昆虫-食料及び飼料の安全保障に向けた展望)」がある。

 この報告書(以下FAO報告書)は、アジアやアフリカを中心とする国々において昔から食べられている昆虫の価値を、現代の視点で捉え直す契機となったといえる。

なぜ昆虫食なのか

 FAO報告書によると、昆虫を食料として利用するメリットは大きく以下の3つに分けられる。

 第1に、栄養価が高い点が挙げられる。200種を超える昆虫の栄養価を科学的に調べた結果、牛肉や豚肉と同等のタンパク質を含むほか、ビタミンB群や鉄や亜鉛といったミネラルも総じて豊富であることが分かった。

 第2に、持続可能な農畜産業に組み込むことが期待できる点が挙げられる。タイにおいて15年ほど前に始まった食用コオロギ養殖では、根菜類栽培の残渣として残る葉や茎部分をコオロギの飼料として利用し、コオロギが排泄した糞は肥料として用いている。このように、農業残渣を高品質なタンパク質に変換することが期待できる。

 そして第3に、環境低負荷で食糧生産ができる点が挙げられる。例えば、ミールワーム(ゴミムシダマシという甲虫の幼虫)の可食部1キロを生産する際のコストを、既存の家畜と比較した論文がある。